「やっぱり」
君はそこに居る



 カ ナ シ ミ ブ ル ー



「そしたら、今日は挨拶に来ただけなんで」
脱いだネクタイとジャケットを掴むと
キャアキャアと言っている女子生徒の横を通り抜けて
逃げるように体育館を後にした。


ようやく校門が見えてきたところで
見知った姿を見つけ、走る速度を緩めた。
「…黒子っち」
「遅かったですね」
黒子は読んでいた本を閉じて黄瀬を見た。
「なんで…」
本当ならこのまま逃げ出してしまいたかったけれど
そう出来るほど黄瀬は大人ではなかった。
「見送りです」
「そう」

微妙な距離に気付かないはずがない
その理由を知らないはずがない
「バスケ続けてたんですね」
「…当たり前です。ボクはバスケが好きですから」
「知ってる。でもオレ、黒子っちに伝えたはずですよ。
此処じゃない何処かに行ってくれって」
「始めからバスケ以外を選ぶ気なかったですから」
黒子はそう言うと黄瀬にぺこりとお辞儀をして
背中を向けた。


「ウソツキ」
段々と遠ざかっていく黒子の背中を見つめながら
黄瀬がポツリと呟くと
聞こえていたのか、黒子は足を止め振り返った。





「それは黄瀬くんも一緒ですよ」



















だ っ て ぼ く ら は 大 人 に 近 付 く し か な か っ た の だ か ら