誰がやろうと言いだしたのだろうか


 プ ラ ス チ ッ ク ハ ー ト





黄瀬以外のメンバーが揃っていた。
部活などでは当たり前のように居るので
決して珍しいことではないのだけれど
何だか珍しかった。
そこに黄瀬が居ないということが。

何故なら黄瀬はしつこいくらいに黒子に付きまとっていたから、だ。
付きまとっているという言い方は失礼かもしれないが
それくらいに一緒に居た。
そして、好きだとアピールしている。
始めは周りが微妙な目で見ていたが
人とは恐ろしいもので毎日そんな様子を見せられていたら
それが日常になってしまった。


「黄瀬は毎日黒子に好きっていってるけど、黒子は黄瀬のことどうなんだ?」
「普通ですけど」
「だよなー」
「そうしたらさ、黒子から黄瀬に好きって言ったらどうなるんだろうな」


誰がやろうと言いだしたのだろうか。
嬉しさのあまり黒子に抱きつくと嬉しさのあまり走って消えてくの
2つの意見しか出なかった。
普段の行いの所為なのだろう。

決行は昼休みとなり
黒子は黄瀬を告白の定番スポットと言われている校舎裏に呼び出した。

「黄瀬くん」
「ん?どうしたの、黒子っち」
「…好きです」
「ごめんなさい」

謝られた時、何故か胸の奥がチクリと痛みを感じた。
何故だか黄瀬の顔を見て居られなかった。
「黒子っちがそう言ってくれるのは嬉しいッスけど無理に言わなくても大丈夫だから。
…だってオレは黒子っちのそんな顔見たくないッス」
「――」

黒子は何か声を出そうとしたが、口が開いただけで
声が出てこなかった。

しかし突然黄瀬を呼ぶ出す放送がかかり
それを聞いた瞬間黄瀬はまずいと呟いたのが聞こえた。
もしかしたら呼び出されていたのかもしれない。
何か言わなくちゃと思うのに
どうしても言葉が出てこなかった。


「…そしたら、また部活で」
黄瀬は黒子に手を振って職員室へと駆けていった。
黒子はその背中を見送り
他のメンバーは黄瀬が見えなくなったところで黒子の元に近寄ってきた。
黄瀬の言動は予想外だったなーなどといった笑い話をしているなかで
ひとり黒子はこれまで味わったこともない痛みを感じていた。