m o r e m o r e



何時もよりは軽い練習だったとはいえ
ハードなことには変わりなく黄瀬は重い足取りで昇降口を出た。
ふと顔を上げると校門近くにふと見知った後ろ姿を見つけ
本人かどうか分からなかったけれども取り敢えず叫んでみた。

「黒子っちー!」

叫ぶとその後ろ姿は足を止め、少し嫌そうな顔で此方を見ている。
やはり黒子であった。
ラッキーと心の中で叫んで、黒子の元に駆け寄った。
「まだ居たんスね。先帰ってたからもう居ないと思ってた」
「先生に呼び出されてたので」
「ふーん」
「…それだけのために大声で呼んだんですか?」
「…あ…いや、そう!ちょっと付き合ってよ」
「え?」
黒子が返事をする前に、黄瀬は黒子の手を握って歩き出した。
先程までの重い身体がウソのようだった。





「…付き合って欲しい場所ってコンビニですか」
「別に良いじゃないっスか!ほら選んで選んで」
黄瀬は黒子におたまを差し出すと
渋々といった感じで受け取り悩み始めた。
それを見た黄瀬は自分のものを入れ始めた。

一足先に黄瀬は会計を済ませると
コンビニを出て入口で早速蓋を開けた。
湯気がふわっと出てきて
やっぱおでんだなぁ…としみじみ思っていると
会計を済ませたらしい黒子がコンビニから出てきた。

「そんな食べるんですか」
「普通じゃないっスかね。…それより近くの公園で行きません?」
黒子からの返事はなかったが
それは了解したものと受け取って黄瀬は
もう1度蓋を閉めるとコンビニ近くの公園に歩き出した。
黒子は何故だか半歩後ろを歩いて着いてきた。




「うまーっ…アツっ!」
「…何やってるんですか」
「はふっ」
「……」

公園に着くと真っ直ぐブランコに駆けて行き腰掛け
黒子が同じようにブランコに腰掛けるのを確認すると
早々と蓋を開けて食べ始めた。
そんな様子に黒子は何も言えなかった。


冬の更に言えば夜の公園には人は居ない。
寒いときに外に出ようだなんて思う人は少ないだろう。
実際容器を持っている手はほんのりと温かいが
身体は冷えてきている。

黄瀬は相変わらずはふはふしながら食べ続けている。
黒子は自分の持っている容器の蓋を開けると
箸で大根を一口サイズにして、口へと運んだ。
一口食べると、身体の中がじんわりとあたたかくなった。




「…おいしい」

黒子がそう呟いたとき
黄瀬が嬉しそうに笑っているような気がした。












そ れ は ひ と り じ ゃ な い か ら な の も ひ と つ の り ゆ う な き が し た ん だ



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リク通りになったんでしょうか、ガクガク
[黒子と黄瀬が部活帰りにコンビニで買い食いするような話]でした。