一 方 通 行 ラ ブ ソ ン グ



今年のバレンタインは土曜日であった。
しかも土曜日は授業を行わない。
なので13日は廊下や教室でチョコの渡し合いが行われていた。
黒子がそのことに気付いたのは、放課後部活が始まる前であった。
何故なら、体育館はレギュラーメンバーにチョコやらなんやらを
渡そうと列になっていたからであった。
明日部活の練習が休みだということを知っているからなのか、
または最近バスケ雑誌で特集を組まれたことが影響しているのかもしれない。
しかし黒子には関係のないことであった。
レギュラーにもかかわらず影の薄さから記者に気付かれずに終わってしまったのだから。
だが悲しいと思うこともなかった。
結局何時もよりも練習という練習をせず部活が終わり
マネージャーからは義理チョコだからと念を押されながらチョコが渡された。


着替え終わって部室を後にすると
黒子は昇降口に向かわず階段をのぼって教室へと向かった。
教室に入ると迷わずに黄瀬の席に着いた。


「…黄瀬くんの…席だ」


感動するところではないと分かっているけれども
何時もは出来ないことをこうやって隠れてするということは
何とも不思議な気持ちを呼び起こし
黒子はその気持ちにしばらく浸っていたいと感じていた。
しかし時間は少ない。
黒子は鞄に手を突っ込みコンビニの袋を取り出し
そこから更にチロルチョコを1粒取り出した。

少しの躊躇を
しかし迷ってはいけない。

机の中に放り入れると黒子は立ち上がり教室を後にした。



「…ふぅ」
昇降口まで来たところで
先程のことを思い出して急にドキドキしてきた。
兎に角早く帰ってしまおうと
下駄箱を開くと靴と靴でないものが入っていた。

「…これは、板チョコですよね…」

今日にそしてチョコレートが入っているということは
多分ヴァレンタインチョコということなのだろう。
何となく持って帰るのは気が引けたが
黒子は板チョコを鞄に入れると靴を履き替え学校を後にした。








黄←黒だと思ってるけど黄→←黒なおはなし。
お互いに気付かないままな中2の冬(の設定)