ブルーブルー



平日はもちろん学校に通っているので
撮影出来る日といえば練習や試合のない日曜か長期休みくらいしかない。
自分で言うのもなんだが、ある程度人気があるため
日曜に撮影となると女の子に囲まれることになる。
こういう時に自分はまだ必要とされていると感じ
だからこそ自分はやっていけているんだと理解はしているのだが
時に煩わしくも感じてしまうのは疲れている所為なのだろうか。


今日は来月号に載るインタビュー用の写真撮影である。
先週まではだいぶ暖かかったにもかかわらず
今週に入りまた寒さが戻った所為で衣装の変更があった。
それに加えここ最近まともに黒子と会話した記憶がない。
こんな時に限って、外での撮影で
女の子たちの黄色い声が聞こえて
嬉しいのに自分の中がもやもやとしていた。

カメラマンはそれを敏感に察し
休憩〜と声をかけてくる。
黄瀬は申し訳なくなりつつも
このままでは向かうことが出来なくてお礼を言うと
普段仕事中は開かない携帯を取り出した。
黒子の声が聞きたいと思ってしまったのだ。
しかし自分自身のなかで色々な理由付けをして
電話をかけることが出来なかった。
仕方なく黄瀬は受信メールを確認しようと携帯を開くと
送信者の名前を見て携帯を落としそうになった。
叫ばなかっただけマシだろう。
その中身は部活の事務的連絡であったけれども
このタイミングでメールが入っていたということが
黄瀬にとってなにより嬉しかった。



「本当流石っス」



鞄に携帯をしまうとほぼ同時に撮影再開の声が掛かり
黄瀬は再びカメラマンの元へと戻っていく。

そんな様子にカメラマンは
にやにやと何か良いことあったでしょと問いかけてきたが
黄瀬は答えることなくポーズを取り続ける。
軽快なリズムで聞こえてくるそのシャッター音が
今一番確かな答えなのだ。