フ ロ ム ユ ー



[ ○●2丁目交差点にいるでしょ ]


黄瀬からメールが来ることは驚くことではない。
ただ、メールに書かれた場所は先程自分が通過した場所だったから。

黄瀬を疑うわけではないけれども
こうやって正確に場所を示されたメールを送られてくるとなると
ストーカーなのではないかと思いたくもなる。
しかし黄瀬のストーカー疑惑はすぐに消えることとなった。
やけに女の子の声が聞こえると思って振り返れば
先程通過した交差点には女の子が居て
自分の知っている人の名前を呼んでいる。
―黄瀬くん 、と。

黄瀬がモデルをしていることはもちろん知っているし
その写真も見たことがある。
しかし実際にモデルの仕事をしているところを見たことはなく
突然何とも言えないものを突き付けられた気分になった。
これ以上ここに居てはいけないと頭では分かっているのに
足は先程まで居た―そして今黄瀬が居る―交差点へと進んでいた。


撮影中のようで周りを取り囲んでいる女の子たちは
ひそひそと格好良いと囁きあっている。
黒子はその隙間からそっと黄瀬を確認し
学校生活やバスケをやっているときとは違う雰囲気に
違う次元の人間なのではという思いを抱いた。
少しずつ動きをかえたポーズを取り続けている黄瀬は
カメラマンの指示に従ってふと此方側に向きをかえた。
黒子もそしてそこに居る女の子たちも此方を向くとは思ってもいなく
黒子は驚き、女の子たちは黄色い声をあげた。
そして、黒子はさらに驚いた。
その隙間からしっかりと黄瀬と視線があったのだ。
勘違いだと思ったけれど、それは一瞬で消えた。
黄瀬はしっかりとそちらを見たまま口を動かしている。
黒子はなんと言っているのかが分かってしまい
その場から慌てて走り出した。