ト ゥ ル ー



何時もと変わらず黄瀬は黒子に付きまとっている。
毎日毎日よく飽きずに黒子にアタックしても
撃沈してしょんぼり出来るな…と感心してしまう。
そんな様子を観察してると
しょんぼりとした黄瀬とふと目があった、気がした。
出来ることなら勘違いでいたいと
その場を早々に立ち去ろうとしたが離脱することは叶わなかった。
にっこり笑って黄瀬が腕を掴んでいた。




「今日の占いは、5位のはずなのだが…」
「そんな中途半端な順位だからいけないんスよ」
黄瀬は何故か屋上に行きたいと言い、捕まったからには仕方なく着いて行った。
先週までは暖かい日が続いていたのだが、今日は風が冷たく感じた。

「…それにしても、よくも毎日飽きずに黒子のところに行くんだな」
「黒子っちが好きだっていうのは嘘じゃないから飽きる飽きないっていうことじゃないっスよ」
屋上の手摺りに寄りかかる黄瀬は逆光のため表情が分からなかったが
口調から苦笑いしていることだけは分かった。
「…すまない」
失言だったと気付き素直に謝ると黄瀬は怖い!とわざとらしく叫んだ。


黄瀬の黒子に対する気持ちは冗談ではないと分かっている。
黄瀬は、誰かの心の傷付けるようなことは決して言わないのだから。
それでも、黄瀬がモテるということや相手が同性であるということ
それが世間では普通ではないと考えてしまうことが稀にあるのだ。
何と言葉を続ければいいのか分からず、考えていると
黄瀬の声が微かに聞こえた。


「…どうした」









「分かってるんスけど…やっぱ辛いっス」

呟くようにそれだけを言い残し、黄瀬は屋上から消えていった。
授業開始のチャイムが響いている。
早く教室に行かなくてはいけないのにどうしても動けなかった。








ふ と こ ぼ れ 落 ち た 言 葉 の な か に は き み の 涙