R a i n
帝光キャプと黒子(中学捏造)





01. 霖 々
降り続ける雨はボクらを憂鬱にさせる。
誰かが苛ついて、黄瀬くんにボールをぶつける。
そうすると黄瀬が騒ぎ、キャプテンが怒る。

「よく毎日繰り返せますよね…」
「いい刺激だろ」
「なんですかね…?」
「なんだろ。…もうすぐ夏だな」
「そうですね」
雨音に混じって、また黄瀬の叫び声がきこえる。
「うるせーぞ!」
そしてまたキャプテンの怒鳴り声。
振り続ける雨はボクらに最後の時間を与えているのか。
(06.23)





02. 梅 雨 豪 雨
雨が降り続く。
誰かが苛ついて、黄瀬くんに八つ当たりをする。
そうすると黄瀬が騒ぎ、キャプテンが怒る。
いつものパターン。
だけど今日は違った。
流石に耐えかねた黄瀬くんが反撃をしたのだ。
まさか反撃をしてくるとは思わずそれからが混乱だった。
やってない人まで巻き込まれ、周りを巻き込み
部全体が混乱していた。
キャプテンが留守にしていたことも要因の1つなのだろう。
黒子は早々と体育館の2階に避難する。

「少しは止めろよ」
突然の声にビクリとしたけれど、その姿を確認して力を抜いた。
「ボクじゃとめられませんよ。それに、楽しそうだから良いじゃないですか?」
にこりと笑って言うと、微妙そうな顔をしていた。
(06.24)





03. 梅 雨 晴 れ
黄瀬による反撃の翌日から
ずっと降り続いていた雨が嘘のように
晴れ渡り暑さが増していた。
「雨やんだと思ったら今度は暑いっすよね…」
「そうですね」
練習しているときはいいが
こうやって休んでしまうと一気に暑さを感じ汗がとまらなかった。
本当はすぐにでも水分補給をしてしまいたいが
それを取りに行く気力もなく
体育館の壁に、こうして黄瀬と2人で寄りかかっていた。

「おい、黒子」
声の方向を向くと、タイミング良く
黒子に向かって、ペットボトルが降ってきた。
丁度いい具合に冷えていて、黒子はほっとするものを感じる。
「ずるいっすよ〜黒子っちだけ!」
「オマエの分はあっちにあるだろうがァ」
「…持ってきてくれたっていいのに」
「黄瀬」
「スマセンッス!」
圧力に黄瀬はビクリと立ち上がって、逃げるようにこの場を去っていく。
「…そこまでしなくてもいいのに」
「何か言ったか」
「いえ、なんでもないです」
(06.27)





04. 半 夏 雨
晴れてはいないけれども、そんなに降ることのなかった雨が
昨夜から急に強く降り始めた。
そして今も降り続いている。

「お疲れっした!」
誰もが練習でへとへとだけれども
降り続き雨に誰もが早く帰りたかったようだ。
次々と片付けを終え、着替えて帰っていく。
今、部室に残っているのは黄瀬と黒子だけになった。
「すごい雨っすね〜」
「そうですね、黄瀬くんも着替え終わってるのなら早く帰った方がいいですよ」
「あれ?これってさり気なく早く帰れって言われてるんスか」
「心配してるんですよ」
黒子は黄瀬を見ずに、黙々と片付けをしている。
ガタンという激しい音が部室に響き、音のする方を見ると
椅子を倒して立っている黄瀬がこちらをじっと見ていた。
「…な…なんです?」
「黒子っちがー!心配してくれてる!」
ガッツポーズをして叫ぶ黄瀬に黒子はビクリとした。
「き…黄瀬くん?」
「黒子っちを1人残すのは申し訳ないっすけど帰るっス!」
ガタガタバタン、と黄瀬は部室から去っていった。
相変わらず黄瀬はそういうところが素敵だと、黒子は感じた。

「黄瀬は帰ったのか?」
それからしばらくして、ガチャリと部室のドアが開く。
今、この時間に来るのはただ1人しかいない。
「帰りましたけど」
「アイツも相変わらずの奴だな」
「それは君も一緒じゃないですか。待ってなくても良いのに」
「待ってた訳じゃねェ」
「そうですか」
そっと頬に触れるその手のひらは
ゴツゴツしているけれどもあたたかかった。
(            )
そう感じても、絶対に言ってはいけないことだけれども。
黒子は、じわじわと伝わるあたたかさに目を閉じた。
(07.02)





05. 夜 春
黒子はそっと自分の頬に手を当てた。
何もないけれども、触れられた感触や体温は自分の中に残っている。
天気予報では1日曇りだったはずなのに
ぽつぽつと雨が降り始めている。
傘は持っていなかった。
例え持っていたとしてもささないだろうけれども。
じめじめとしているのに
雨で段々と体温が奪われていくようだった。
その感触も体温も流されていくようだった。
変えようのない事実を振り払うように進んでいく。

今日ほど、雨が嫌な日はないだろう。
(07.04)





06. 涙 雨
その日、黒子は黄瀬に呼び出された。
黄瀬の表情から、黒子は黄瀬が何が言いたいのかだいたいの予想がついた。
その予想は出来るなら当たって欲しくないと願っていた。

「黒子っちは…キャプテンと付き合ってるんスか」
「違いますよ」
「で…でも…!」
「ボクと、彼は付き合ってないです」
「そしたら…」
「次、移動ですから」
黒子は、黄瀬に背を向けた。
「黒子っちは…一体誰のものなんですか」
風に乗って微かに聞こえた声に黒子は溜息をついた。


「黄瀬に呼び出されたんだってな」
「…早いですね」
「緑間から聞いた」
「そうですか」
「告白されたのか」
「違います」
黒子は俯いていた顔をあげた。
疑うような眼差しで自分を見ている。

(ボクは誰のものでもないのに)
その声は誰にも届かない。
(07.05)





07. 梅 雨 明 け
「優勝おめでとうございます」
「それはオマエも一緒だろうがァ」
「それもそうですね」
頬にそっと触れたキャプテンの手を自分の手と重ねた。
「黒子」
黒子はこの手が好きだった。
大きくてゴツゴツとしているけれどもあたたかい手が。
「さよなら」
名残惜しくも、その手をはなして別れを告げる。
―最初から決まっていたことなのだから。
(07.06)





...end