お め で と う



「黄瀬くん」

声のする方を見れば、黒子が校門の所にちょこんと立っていた。
黄瀬は小走りで黒子に近寄っていく。

「黒子っちーお待たせっス」
「大丈夫です。それより黄瀬くん相変わらずですね」

黒子が指しているのは、黄瀬が持っている紙袋だった。
黄瀬は苦笑いしている。

「出来るだけ断ってたんスけど、置かれてたりとかで…」
「…そうしたら、コレは邪魔ですかね?」

そう言って黒子は黄瀬の目の前に小さな紙袋を差し出した。

「まさか!ありがとうっス!黒子っちから貰えるなんて…!」
「正確にいうと、ボクと火神くんからです。改めておめでとうです」
「ありがとうっス。…本当黒子っちと火神っちは仲良いっスよね〜…嫉妬っスよ」

プレゼントを貰って嬉しそうだったのに、
火神の名前を聞いて黄瀬はむすーっとした顔をしている。
黒子はそんな様子を見て、よく表情が変わるなぁ…とぼんやり感じた。



「なんか去年が懐かしいっス」
「…去年?」
「オレらレギュラーって話はするけどそこまで仲良いわけじゃないと思ってたんスよ」
「まあ、そうですね」
「だけど、誕生日の時祝ってくれたじゃないっスか」

黒子はそう言われ、去年のことを思い出していた。
黄瀬の誕生日なんて誰も意識していなかったが
黄瀬好きの女の子たちがきゃあきゃあとしていてそれで気付いた。
誰かが「腹立つ」と言いだして
それから何故かボールをぶつけてやろうという話になった。
そしてボールをぶつけて、突然のことにビビる黄瀬に
「お前、誕生日だろ」と言ったことは言ったが

(…あれはお祝いというんですかね…)

黒子には分からなかったが、もしかしたら自分の気付かないうちに
何かがあったのかもしれないと考えるのをやめた。

「かなりビビったからすごい記憶に残ってるんスよね」
「…そう、なんですか」
「そうっス。そして、今年も記憶に残る良い日になったっス」
「なんかやられたんですか?」

黒子が問うと、黄瀬は笑顔で黒子を指差した。






「だってこうやって黒子っちと誕生日を過ごせてるから」
黒子は何と返していいのか分からず、黄瀬をただ見つめていた。