「テツは、アイツを通してオレを見てる」

桃井は青峰のそのコトバに返事をすることが出来なかった。
緑間と黒子の試合を見ていて黒子の力が発揮しきれていないことを
なんとなく感じていた。
しかしそれはあの帝光レギュラー陣とのプレイを間近で見ていたからこそ
感じるものであり、今黒子が一緒にプレイしているのは
そのメンバーではない。
違うと感じるのは当たり前だと思っていたし
桃井は火神をダメだとは思っていなかった。
寧ろ火神ならば、黒子を助けてくれるのではないかと思っている。

「…さつきもそう思わないか?」
「分かんないよ」
「オレだけが、テツの力を完全に発揮することが出来る」
「だったら…だったらなんでテツ君をあんな風に突き放したの?」

出来ることなら思い出したくないあの時のこと。
だけど、忘れることの出来ないくらい衝撃的で…。
あの時の黒子はこのまま壊れてしまうのではないかと思うほどだった。
だからこそ黒子はバスケ部から去り、バスケ部の部員とも距離を置いた。
もちろん桃井とも。

「なんでかって?」
その声に桃井はゾワっと冷たいものを感じた
「そんなの簡単なことだろ」
「え?」
「こうすれば、テツは絶対にオレを忘れない。
オレを拒絶しようとも、オレに似たものを求め、そのモノを通してオレを見る。
そして気付くんだよ」
「…何に」

桃井は尋ねてから後悔した。
青峰はどこか楽しげに、そして冷たく笑っていた。

「テツにはオレしか居ないってことにな」






ガラスを通してみた世界に
キミが居ると信じているのだろう