嫌だと言って拒絶して、とらわれた。





「黄瀬くん、ここから出してください」
「ダメっス。そうしたら、黒子っちはオレから逃げるでしょ?」
誰もが憧れる笑みを浮かべ、黄瀬は出掛けていった。
パタンとドアがしまり、此方と彼方の境目が閉じられる。
黒子は、ふぅと溜息をつき
閉まりっぱなしのカーテンを開いた。
何だかんだといって、黄瀬は部屋の中を自由にさせてくれた。
だから、逃げようと思えば出ようと思えば、十分可能だった。

窓の外を見ると、黄瀬が丁度マンションを出るところだ。
黄瀬は一度も振り向いてこちらを見たことがない。
だんだんと遠くなっていく背中を見るのをやめ
黒子はカーテンを閉めて、窓に寄りかかった。

黄瀬は誰にでも笑いかける。
平気で黄瀬は、女の子に笑いかけ、その声で好きという。
黒子はそれが嫌だった。
しかし、黒子がここに居れば、黄瀬は必ず戻ってくる。
必ず帰ってくる。


(今は、我慢のとき)
少しずつ、黄瀬が黒子から離れられなくなるために
黒子はとらわれたフリをし続ける。






―本当に捕まったのは、誰ですか