こ の 腕 い っ ぱ い の
中 学 2 年 生









「黒子っちの誕生日って何時っスか!」


黄瀬はいつも唐突である。流石にだいぶ慣れたが、未だに驚かされること が多い。
黒子は少し考えた後に、ぽつりと答えた。
「今日です」
しっかりと黄瀬の耳に届いていたようで、驚いた顔で黒子を見ていた。
「え…マジすか。うっわー…どうして早く気付かなかったんだろ」
「と、言われても…」
「ですよね。…はっ!黒子っち」
「な…なんですか」
「ハッピーバースで!おめでとうっス!」
「ありがとうございます」
「今日の、放課後はオレのために空けておいてくださいね!」
「…え?」
黒子は驚いて黄瀬を見たが、黄瀬は何かを言う前に呼ばれてしまい、
黒子にごめんと両手を合わせてその場を離れていった。
周囲では、私も黄瀬くんにああ言うこと言われたいとかズルい!と いうような声で溢れていた。
「いいなー黒子くんは」
まさか話しかけられるとは思ってもいなかったので、黒子は驚いて顔を 上げた。
そこには女の子が一人、黒子の傍に居た。
黒子は珍しく驚いた 表情をしていたが、その女の子はいいなーと言いながら
遠くを見ていて 気付いていない様子だった。
「部活が一緒だし、席も前後だし!」
「…そうですかね」
「そうだよー!」
そういうものなのか、黒子には分からなくて首を傾げるだけだった。


「黒子ーっち!かーえろ!」
ホームルームが終わると、黄瀬はすぐに黒子の方へ振り向いた。
「…あの…今日はちょっと早く帰りたいんですけど」
「え!?」
「家族が祝ってくれるので」
「あ、そ…そうっスよね!急にごめんっス」
まさか、黄瀬がここまで落ち込むとは思ってもいなくて黒子は慌てた。
「そ、そんなことないです。嬉しかったです。…よく、忘れられるので」
「オレは忘れないっスよ!」
「……」
「オレは忘れない。来年、絶対お祝いするっスから!そしたら再来年も、 その次も…!」
「…ありがとうございます」
「うん…ホント、おめでとうっス!…じゃあ」
「ええ、また明日」
黄瀬は手を振って、送り出してくれた。
何時もと違う感じに、黒子は どこかあたたかさを感じていた。





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