こ の 腕 い っ ぱ い の 愛 を
中 学 3 年 生
ふと、1年前のことを思い出したのは、後悔しているからなのだろうか。
彼が1年後も覚えているという確証もないというのに、どこか寂しく
感じた。
夏から逃げ続けてもう冬を迎えた。もうすぐ春がやってくる。
自分がいけない訳ではないけれど、ただもう会えないことだけは分かっ
ていた。
遠くから彼を見たことはある。
彼は、変わってしまったし、
変わってはいなかった。
誕生日。いつもと同じ誕生日のはずなのに、同じではなかった。
変わら
ないと思っていたものは、1年の間に自分の気付かないように変わっていた。
嬉しいはずなのに、悲しい。
毎年同じように家族に祝ってもらって、
それからおやすみと言って部屋に戻った。
パタンとドアを閉めたのとほぼ同時に、何かが頬を伝った。
気付かない
フリをしようにも、はっきりと気付いてしまった。
…黄瀬のことが好きだということに。
「…どうして、この日に」
言葉に出してしまえば、余計に涙が止まらなかった。
→高校1年生